交通

茅ヶ崎市議会議員 木山こうじ【交通安全教育】

【交通安全教育】

皆さん、こんにちは。

茅ヶ崎市議会議員の木山こうじです。

 

11月29日(金)に一般質問を行いました。そのうち「交通安全教育」について質問しましたので、その内容を少しご紹介します。

日本の交通事故の現状、世界との比較

令和6年11月に道路交通法改正により、「ながらスマホ」や「酒気帯び運転等」の罰則が強化された。自転車利用者の多い本市にとって影響の大きい法改正となったのではないでしょうか。改めて、自転車利用のルール・マナー向上について考えなければなりません。

世界との比較で日本は歩行者と自転車利用者の死亡事故の割合が高く、歩行中及び自転車乗用中の死亡事故だけで全体の52.2%と、半数以上となっていて、日本だけ突出しています。また自転車乗用中の死亡事故に至っては0歳〜14歳の構成率が他国と比較して高くなっています。

 

※内閣府資料 欧米諸国の交通事故発生状況より

 

 

神奈川県における自転車関連の交通事故の発生状況は、令和5年中に発生件数が21,870件、負傷者数が25,644人、死者数は115人と、前年と比べて増加しています。

自転車事故の発生件数や全事故に占める割合は近年横ばい状態ですが、全国的にみると自転車乗車中の交通事故死者数は減少傾向にあるのに対し、全事故に占める割合は増加傾向にあります。

本市においても依然として県内での「自転車交通事故多発地域」に指定されています。自転車事故の発生状況としては、平成12年をピークに徐々に減少しましたが、近年は微増微減で推移し、令和5年は169件となっています。大幅な減少に至っていない要因の一つとしては、本市の道路全体のうち、センターラインなどがない幅5.5m未満の生活道路が約9割を占めているため、自転車事故の割合が非常に高い状況になっていると考えられます。

 

発達段階に応じた交通安全教育の必要性

また、令和6年3月に答申された自転車プランの事後評価の中での調査では、自転車利用者は交通ルールを守っていると「思わない」「やや思わない」の回答割合は全体の57%であり、「思う」「やや思う」の回答割合(15%)を大きく上回りました。 依然として自転車利用者の交通マナー、ルール遵守の点で課題があると言わざるを得ません。

これまで、ライフステージ・発達段階に応じた交通安全教育・自転車安全教育の重要性を何度も訴えてまいりました。

日本自転車普及協会や関連する安全教育機関のデータでは、自転車の練習を始める平均年齢は4歳から6歳とされています。よって未就学の時期から継続的に教育を進めていくことが大切です。

京都市では2018年、「京都・新自転車計画」の一環として、自転車安全教育プログラムを構築。

教育内容や取り組みを、年齢や環境に応じて6W1H(だれが、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように、だれに)で整理し、幼児から高齢者までのライフステージ別に、自転車安全教育を体系的に実施しています。

幼児期は、身体的なバランス感覚や運動機能が未熟であるため、基礎的な操作技術を学ぶことが中心になります。特に体験型の教育が効果的で、京都市ではキックバイク教室を開催するなど、楽しみながら自転車に触れる機会を創出しています。

また、子どもは大人の行動や態度を模倣するため、親の教育参加も重要です。

小学生は、視覚的情報処理や判断能力が発達する段階であり、ルールやマナーを理解しやすい時期です。

高学年や中高生になるにつれて、仲間との集団行動やリスクテイキング行動が増え、ルール軽視や冒険的な行動が見られることがあります。この段階では、ディスカッションやグループワークなどを通じて態度を変える教育が有効です。

高校生や大学生は、より複雑な交通状況に直面するため、高度なリスク予測能力や社会的責任の理解が求められます。京都市のデータでは、幼児や高齢者の事故率は比較的低いものの、通学や通勤での利用が増える中高生や社会人ではリスクが高まる傾向があります。これに対応するため、年齢や利用目的に応じた教育が必要です。

以上のように、年齢や成長段階ごとに自転車利用における能力、知識、態度は異なるため、それぞれの段階で適切な教育を行い、より安全な自転車利用を促進することにより、事故のリスクを減少させることが重要となります。

 

京都市における自転車事故件数は平成16年をピークに減少し、約8割減。自転車安全教育プログラムの有効性が確認されており、特に幼児教育では保護者から高評価を得ています。

私は、こういった教育をこの「自転車のまち、茅ヶ崎」でも推進していきたいと考えています。

 

一方で学校での交通安全教育は。。。

ライフステージ毎の、発達段階に応じた交通安全教育の推進は学校教育としてどのように交通教育を行っていくのかが重要と考えます。

文部科学省が発表している「文部科学省交通安全業務計画」では、教育委員会や学校が進めるべき交通安全教育の記載があります。

令和6年度文部科学省交通安全業務計画

https://www.mext.go.jp/content/20240329-mxt_kyousei02-100012851_003.pdf

業務計画の中では、教育委員会、学校において交通安全教育を行うこととしております。本市では市長部局との連携により交通安全教室は開催しているが、学校主体の交通安全教育については各学校の校長の裁量に委ねられているところが大きいというのが現状です。

業務計画の4Pから6Pにかけて、幼児から小学生、中学生、高校生など世代ごとに行うべき指導についての記載があります。

例えば小学生に対する交通安全教育は、歩行者及び自転車の利用者として知識だけではなく技能も習得させることや、危険予測・回避する能力を高めることを目標とすることなどの記載があります。

また交通安全教育の実施にあたっては,家庭及び関係機関・団体等と連携・協力を図りながら,学習指導要領等に基づく体育科,特別活動はもとより各教科等の特質に応じ,学校の教育活動全体を通じて,歩行者としての心得、自転車の安全な利用、乗り物の安全な利用、危険の予測と回避、交通ルールの意味及び必要性等について心身の発達段階や地域の実情に応じて指導することとあります。

本市では、安全対策課と協働で小学校3年生と中学校1年生対象とした自転車安全教室を実施していますが、業務計画が求める能力は、単発の教室を開催するだけで身につけられるものではありません。

また、この自転車安全教室を令和6年度中に実際に実施した学校は、小学校19校中17校、中学校13校中11校と、学校によって温度差があることがわかります。

交通安全教室についても、安全対策課との協働事業だけにとどまることなく、教室の振り返りや反復の学習など、学校が主体となり、日常的かつ継続的に実効性のある教育を行う必要があると考えます。

以下、科学警察研究所による「子ども・生徒を対象とした自転車安全教育」に関する研究成果を抜粋し、要約したものです。

1.交通安全教育の定義と位置付け

  • 子どもの交通安全教育は「知識→技能→態度」の3ステップを基本構造とし、発達段階に応じて繰り返し実施する必要がある。
  • 教育は短期的な事故回避と、長期的な社会的責任を持つ交通参加者の育成を目的とする。
  • 家庭、学校、地域の連携が重要であり、親の行動や知識が子どもに大きく影響を与える。

2.自転車の安全利用に必要な能力・スキル

  • 技能: バランス維持、加減速、視覚的情報処理など。特に13歳頃まで認知機能が未熟であり、危険予測能力が低い。
  • 知識: 交通ルール、自転車の仕組み、適切な整備方法。
  • 態度: リスク回避、安全優先の意識。他者への配慮が重要。
  • 高学年の生徒ほどリスクテイキング(冒険的行動)に走る傾向があるため、態度形成教育が求められる。

3.安全教育プログラムの策定と評価

  • 効果的な教育プログラムは科学的エビデンスに基づいて設計・評価されるべき。
  • 行動変容の理論を活用し、単なる脅威アピール(事故の恐ろしさを強調する教育)は避け、具体的な対処行動を教えることが重要。
  • 教育効果を測定する際には、態度や行動の変化を追跡することが推奨される。

 

※補足(スタントマンが事故現場を再現する「スケアードストレイト」の効果、その是非については長年諸外国で議論されています。多くの人の考えに反して、脅威アピールに基づく安全教育の効果は大きくなく、むしろ逆効果となる可能性があるとする論文もあります。

※品川区HPより

欧米では、ショックや恐怖に訴える型の安全教育は、子ども・生徒には行われていないとみられ、脅威アピール型教育を行うのであれば、具体的な対処行動を教える、あるいは、対処行動を考える訓練をすることが必須であるとされております。

※2024.10.30 第3回自転車の交通安全教育の充実かに向けた官民連携協議会資料より

日本ではスケアードストレイトを教室に取り入れている学校が依然として多数ある。京都市では死亡事故が発生して以来全市で廃止となっています。茅ヶ崎市でもエビデンスに基づいた教育を推進するよう要望しました。)

https://www.j-cast.com/tv/2019/04/15355222.html(京都市でH31年に発生したスケアードストレイト死亡事故の記事)

 

 

日本では短時間・短期間の教育が多く、実際の交通環境を模した訓練が不足しています。

また、親と子どもが一緒に学び、家庭内でのやり取りが教育効果を高めるため、自転車教育を日常生活に取り入れることで、継続的な学びが可能となります。

今後も、学校が主体となった交通安全教育を積極的に進めていくことを要望してまいります。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

木山こうじでした。

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