茅ヶ崎の皆さん、こんにちは。
茅ヶ崎市議会議員の木山こうじです。
令和5年12月15日(金)に一般質問を行いました。
テーマとしては、「不法投棄」「市境問題」「産後ケア」「モビリティ政策」についてでした。中でも「モビリティ政策」については、今後茅ヶ崎のまちづくりを進めていく上で特に重要なテーマですので、内容について少し触れさせていただきます。
茅ヶ崎市の将来の人口動向において、少子高齢化により総人口は減少するものの、高齢者は増加する見込みです。この変化により、免許返納が増加し、代替の移動手段の需要が高まると予測されます。全国的には、若年層の免許取得率や車所有率が低下しており、代替の交通手段への需要が拡大している一方で、バス路線、鉄道路線ともに廃止路線が増加傾向にあります。
茅ヶ崎市の人口はまだ微増傾向にはあるものの、少子高齢化が進行中であり、これに伴い公共交通利用者数が減少し、市の財政状況が厳しくなる可能性があります。また、地方部ではマイカー依存が強まり、公共交通が危機に瀕しています。これが都市圏周辺でも同様の問題が生じる可能性があります。
公共交通の運営においては、コロナの影響で鉄道や路線バスの利用状況が悪化しており、特に路線バスは運転手不足や燃料費高騰などで経営が厳しい状況です。バス運転手の労務環境改善が計画されていますが、短期的には現行の運行本数を維持するのが難しく、コミュニティバスも利用が減少しており、その影響が続いています。
これにより市の財政負担が増加し、コミュニティバスや予約型乗合バスの持続性に課題が生じています。
そういった茅ヶ崎市が抱える課題を解決するための取り組みをまとめた、「地域公共交通計画」が今年度策定予定となっています。
しかし、本計画は、ただ単に公共交通をどう維持するのか?といった生産性だけに重きをおいたものにせず、最大の目標は「市民の生活の質(QoL)の向上」と「利便性(アクセシビリティ)の向上」であるということを念頭に、10年後、20年後、茅ヶ崎をどんなまちにしたいのか?理想のまちづくりを進めるために茅ヶ崎にとって最適なモビリティ政策とは何なのか?といった視点を持って、計画の策定を進めるべきであると考えます。
ヨーロッパでは、持続可能な都市モビリティ計画(Sustainable Urban Mobility Plan)「SUMP(サンプ)」という考え方が主流になっています。
SUMPの主な特徴として、まず将来の未来都市像などのビジョンと目的を決め、施策を策定することにあり、需要追随型の交通策定から、地域・まちづくりの観点からみたバックキャスティング型の計画づくりを推奨しております。
例えば、モビリティ政策の中での「健康」の位置付けはというと、
通常の計画:
(目的)市民の移動手段を確保
→交通空白地帯を解消、公共交通を維持
→脱マイカー、徒歩や自転車を利用
→健康になる
「健康は結果的に生み出されるもの」
SUMP:
(目的)健康(QoL向上)
→ウォーカブルなまちづくり
→脱マイカー、徒歩や自転車利用へシフト
→公共交通を維持する必要性
「SUMPで健康は大目標の一つ」
似ているようで捉え方が全く違います。SUMPのように日本においても健康な社会を築くという目標から逆算して、モビリティ政策を考えるといった視点が必要です。
また、SUMPでは計画の策定において、モビリティに関する問題や機会を主要なステークホルダーや市民と議論し、分析をしたり、施策パッケージの選択や、評価など、計画サイクルの中への市民参画を重要視しています。
計画の素案が出てきた後、パブリックコメントでしか市民が参加できないようなものではなく、策定の段階から積極的に市民参画が重要であるとしています。また市民を交じえ、事前にモニタリングの方法を組み込み、そこからの学習を導出する循環型の計画にすることも重要であるとしています。
SUMPの考え方に基づいて言えば、地域公共交通計画は、「都市圏域」を対象とする持続可能なモビリティの計画にするべきもので、狭い行政区域ではなく、人とモノの流れに沿った圏域で考え、関連するセクター(土地利用、空間計画、社会サービス、健康、エネルギー、教育等)の政策・計画と整合性や補完性を確保するためのものでなければなりません。
審議会で資料として出ている本計画の素案を見る限りでは、目的や目的に対するKPIの設定、市民参画の計画性などが個人的に少し弱く見えてしまっています。
本計画は、茅ヶ崎の20年後、30年後のまちづくりにも影響してくるものであるため、本計画が主眼をどこにおいているのかが非常に重要ですので、年明けに出てくるであろう素案を精査してまいりたいと思います。
木山こうじでした。
※文中画像は、
沖縄総合事務局 関西大学 宇都宮浄人先生の「SUMP(持続可能な都市モビリティ計画)とは」と題した、交通人材の育成・人的ネットワーク形成のための勉強会資料より引用